「なまっ、名前...?」



予想だにしてなかった出来事に、びっくりして声がひっくりかえる。


え、なに?

なにごと?



「百地 ゆかり(ももち ゆかり)だけど......」



一応、これでも同じクラスなんですが?

しかも一年生の時は同じ保険委員だったんですが?

二年生の今も同じクラスだったんですが?



......せめて苗字くらいは知ってるかと思ってた。



勝手に期待して、覚えられてなかったと勝手に落ち込んで、若干不機嫌そうになってしまったわたしの名前は、けれども斎賀くんの柔らかくてどこか嬉しそうな声に塗りつぶされる。



「百地」


「え!?ちょっ...!?」



グイと斎賀くんがわたしを引き寄せて、覗き込んだ。


顔面偏差値が高っ!


いまだかつて、こんなに近くで斎賀くんの顔を見たことがない。


イケメンオーラぱない。マジぱない。眩しすぎるっ!


たじたじと後退するわたしに斎賀くんは、




「すっごく可愛い。ね、俺と付き合ってよ」




そう言って極上の笑みを浮かべた。



「..........は?」



つ、付き合う?

だ、誰と誰が...?


キャパオーバーでパカンと口を開けたわたしの後ろで、「いやぁぁぁ!」と三人分の女子の悲鳴が響き渡った。