「リンタールの歌姫、だったか?
捕らえられたというのに、随分と元気なようだな」

俺の頬を見て言ってるのか。

ったく、情報が早いな。

「恐怖で捩じ伏せろ。
少しでも希望を見せたら調子に乗るぞ」

じっとこちらを見る。
兄のこの目を向けられた兵士たちは、いつも石になったように硬直してる。

俺も、この目は苦手だ。

「って、それくらいわかってるよな。
それに、恐怖心を与えるのはお前の得意技でもあるんだし。

話はそれだけだ。
出ていいよ」

思わず舌打ちが出そうになる。

俺が神楽弥に叩かれたことも。
その事に対して、何も罰を与えられなかったことも、全て見透かしているようだ。

兄は、何を考えてるのかわからない。
なのにこっちの考えはいつも筒抜けだ。

正直気持ち悪い。