それからナツキ王子は何事もなかったかのように部屋から出て行って、私は一人閉じ込められた。
一人になって、徐々に落ち着きを取り戻していく。
ナツキ王子の言う通り、恋愛感情が無くてもキスくらいはできる人もいるんだろうな。
現に、ナツキ王子からは何の感情も伝わってこなかった。
無だった。
まるで、唇同士がぶつかったみたいな。
…そっか。そう考えよう。
あれは唇がぶつかっただけ。
キスじゃない。
…きっと、大丈夫。
私が気にしなければ、誰にも知られることはないし。
でも、カナトに秘密を作るのも嫌だな。
かと言って自分から話すもの気が引ける。
綺麗さっぱり忘れられたらいいのに。


