うん。
一人で何時間もぼーっとしてるだけじゃ、やっぱり暇をもて余す。

なんか面白い本ないかな。
本棚を見てみるけど、どれも難しそう。

あ、この引き出し…。
昨日の夜、カナトが何かを隠してた場所だ。

勝手に覗こうなんて駄目。
それをしたら、裏切ったことになる。

マリア姫のことも話してくれたんだし、大事なことなら話してくれるに決まってる。
カナトが話してくれるまで、待てばいい。

そう思うのに、勝手に手がのびる。

ガチャ。

はぁ。
鍵がかかってる。
何度引いても開かない。

「何してるんですか?」

「わっ」

いつの間にかシンが部屋に入って来ていた。

「あー、鍵がかかってるんですね。
開けましょうか?
これくらいの鍵なら開けられますよ」

どこに持っていたのか、針金を取り出してニヤリとする。

「いやいや、開けないで。
ここにはたぶん、カナトの大事なものが入ってるんだと思うの」

「じゃあ、なんで開けようとしてたんですか?」

もっともな質問。

シンは、本当に理由がわからなくて聞いてるんだろうか。
それとも、全て見透かした上で試してるんだろうか。

考えてみてもわからない。
観念して、全てを白状した。

「ははーん。
なるほど。

カナトも甘いですよねー。
神楽弥に見せられないものをこんな所に隠すなんて」

「シンは、ここに何があるか知ってるの?」

「まぁ」

「何?」

誤魔化そうとしてる。
シンにしては珍しい。