君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。

会談の場で見たときよりもさらに黒い雰囲気をまとっている。
夜の闇さえも覆ってしまいそうなほどの黒。

この人は、存在そのものが周りを威圧する。
そういう才能の持ち主だ。

威圧に身体が縮こまるのを感じながらも、思ったままに返事する。

「追いかけるなんて、出来ません」

「あぁ、そう。
所詮はそういう関係ってことか」

そういう関係って何よ。
あっさりと言いのけるナツキ王子に、若干腹が立つ。

確かに、はっきりした関係じゃない。
それに、心のどこかで、はっきりさせたくないって思ってたりもする。

だって仕方ないじゃない。

私はこの世界にとって、あまりにも不安定な存在だから。

どうやったって、婚約者っていう関係性には勝てっこない。