君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。

頭が真っ白になる。
本当に婚約者なの?

「そうよ。
ナツキ王子の言う通り。
早く行きましょう」

ほら、と促されると、カナトは何か言いたそうにしてたけど、そのまま連れていかれた。

ただ私は、二人の後ろ姿が遠ざかっていくのを見送るしかない。

…嫌だ。
行かないでよ。

心の底からそう思うんだけど、あの二人の後ろ姿は様になってる。
悔しいけど、悲しいけど、
…お似合いだ。

何をしてるんだろう、私は。
あてもなく、力なく歩き出す。

すると、ドルツの王子に呼び止められた。
たしか、ナツキ王子って言ったっけ。

「何ですか…?」

「そこまで落ち込むなら、追いかければ良いだろ」

どこにも感情のこもっていない声と、真っ黒で冷たい瞳がこちらを向いている。

…。

その瞳に、無意識のうちに呼吸が浅くなる。