ただ呆然と立ち尽くしていると、カナトに抱きついたままの彼女と目が合った。

「あなた、使用人?
ならちょうどいいわ。
カナトが朝まで自室に戻らなくても、心配しないでね」

「…なっ…!」

朝までってどういうことよ!

って、言いたいけど言えるはずない。

「マリア、ちょっと…」

抱きつかれた手をほどいて、待つように諭している。

「カナト王子。
せっかく婚約者がいらしてるんですから、貴重な時間を大事にされては?」

いつのまにか私の隣に立っていたドルツの王子が、冷たく声をかける。

ま、待って。
婚約者!?

マリアと呼ばれた彼女が、カナトの婚約者って…。

嘘でしょ?

カナトはただじっと、ドルツの王子と火花を散らしている。