放課後、ロッカーから鞄を出すと、教材やらをその中に詰め込む。
 時々、隣に座る功太君が目に入るんだけど……
 見られてる……
 表情ははっきり見えないけど、心配そうな顔してるんだってことは、だいたいわかった。
 だって私、たぶん今日はうまく笑えていなかったから。
 笑うたびに頬の端が引きつっているのが自分でもわかった。

 帰りの会が終わって解散するときになっても、私は席を立たなかった。
 友達には先に帰っててといい、部活には休むと連絡を入れる。
 部活には先輩がいる。
 こんな笑顔で、このままでなんて、行けるわけがない。

 「はぁ……」

 やっと立ち上がって窓に近寄ると、私はため息をついた。
 教室内の生徒の数がだんだん減っていく。
 ざわついていた教室は静かになって、やがて声も聞こえなくなった。
 その間私は、ずっと窓の外を眺めていた。
 門からは、同級生たちが次々と出ていく。
 もうこの教室には私しかいないのかな。

 「辛いの……思ってたより……」

 窓の外へ目を向けたまま呟く。
 それは無意識に口から零れていた。