数人で集まっているグループから、友達とはしゃぐクラスメイトの会話が聞こえてくる。
 周りに気づかれないようにそっと席に着いた私は、頬杖をついて自分の机を見下ろした。
 フラれちゃったよ……
 そう心の中で呟いてみても、ひんやりとした机は何も答えてくれない。

 「……柚月さん……?」

 「……え?」

 無機質な机を見つめてるうちに、不意に隣の席から聞こえてくる声に顔を上げた。
 佐倉功太くん。
 人気者なわけではないけれど、まとう雰囲気が優しく穏やかで、数人の女子から人気だったりする。

 「な、なに……?」

 功太くんとは係を一緒にやっているときくらいしか沢山話したことがないから、こうして教室で話しかけてきてくれるのは珍しい。
 さっき泣いたし、もしかしたら目腫れてるかも。
 功太くんの方を横目で見ながら、目元を手で然り気無く隠す。

 「柚月さん、さっきからずっと机ばっか見てるよ。どうかした?」

 ……げっ、見られていたのか。
 すごく気の抜けたような、変な顔してなかったかな。
 そう考えると恥ずかしくもあるが、私はとっさに笑顔を作った。

 「何もないよ? 別に……」