「天川 遥(あまかわ はるか)さん、はじめまして。わたくし、週刊レイリ―の編集担当をしております、林(はやし)と申します。今回は取材のお引き受けありがとうございました」

「…林さん、こちらこそはじめまして、天川です。今日はよろしくお願いします。さあどうぞ、おかけになってください」



午前十一時三十四分。中世ヨーロッパを連想させる小洒落たクラシックが流れている。


フォーマルな白いワンピースに身をつつんだ私の正面には、肩まで伸ばしている黒髪が清潔的な女性。

私と同年代くらいだろう彼女は、垂れ目な一重をさらに細ませながら、“週刊レイリ―編集担当 林 信子(のぶこ)”と記載されている名刺を丁寧に手渡してきた。

優しさと落ち着いた印象を感じさせる素敵な女性だと思いながらそれをありがたく受け取るが、まるで就職活動の面接でのお決まりごとのようにその場の着席をうながすのはいまだに慣れないものだ。


立派にできたシャンデリアからは気取ったようすのないあたたかな灯が降り注ぐ。

弾力がよすぎる長ソファーに腰かけてから机上のティーカップに手を伸ばすと、老若男女、多くの人がその場に訪れている状況に、思わず目を奪われている自分がいることに気付いた。