そんな良き春の息吹が感じられる五時間目。

外ではどっかのクラスが体育の授業の真っ最中。

ボールの動きに合わせて、青色ジャージの“点”が動いたり止まったりするグラウンド全体を、私―――天川 遥は、古びた校舎の三階の教室からぼんやりと眺めていた。



ショートがあまりに下手だった。

多分野球をやったことがない人間なんだろうが、あれはあまりに凡ミスすぎる。多分、私でもそんなことはしない。

思わずこっちが首を振ってしまっている一方で、チームメンバーはホームに戻ってきたバッターを大はしゃぎで歓迎する。

それがだいぶ離れたここまで届いてくるのだから、かなりのエキサイト具合だということが分かった。


でも、楽しそうで羨ましいとも思わない。
別にスポーツは好きじゃないし。

…と、考えながら学校の敷地の向こう側に視線を寄せる。学校のすぐ真正面には、太陽の日差しを浴びて一面を輝かせる大海原があった。




「進路希望調査用紙は、来週までに提出するようにー、いいなー?」



――――そこで割り込む、担任の声。

窓際の一番後ろで頬杖をついている私は窓の外から教室の中に目線を戻し、居眠りをしている生徒、真剣に話を聞いている生徒、隠れて携帯をいじっている生徒を通り越して、正面の教卓に意識を向けた。