「星が、降ってきた、と…?」

「はい。嘘のようで本当の……いや、もしかすると夢だったのかもしれません」

「…夢」

「眩かった……。自分がかかえている悩みなんてごくちっぽけなものに感じられたくらい…神秘的な、光景でした」





***





カ、キ――――ン!

硬式ボールが見事金属バットの中央にヒットして、青空を突っ切るように大きな放物線を描く。


走れー!だとか、いけー!だとか、同時に無邪気でにぎやかな声が聞こえてくる。

振り上げたバットを投げ捨ててファーストに走り出すバッター、まさか打たれるとは思っていなかった…なんて顔をしているピッチャー、勢いよく飛んだボールを必死に追いかけるレフト、一方まったくやる気のないセンター。

…ああ、一点取られた。



それは、桜のつぼみがようやく膨らんできた四月初めのこと。

そういえば、今年の桜の開花は全国的に見ても例年より遅めらしいのだと、今朝見たニュースで報道されていた。

―――たぶん、もうそろそろ咲く。

今日なんて五月中旬並みのあたたかさを記録したらしいし、それに、毎年この時期になると感じる“春の匂い”ってやつが私にそう告げている。