「そう。小さい頃から可愛かったお姉ちゃんばかりお母さんは期待をして……いつのまにか私は自分を守るため、目立たないように生きてきた。そうしたらそうしたで、お姉ちゃんを見習え、お姉ちゃんはすごいのに……って。」
自嘲気味に笑った綾乃の瞳に流れた涙を、カズはそっと指で拭った。

「前も言ったろ？お前はお前だって」
「そんな事言ったって、あなただってお姉ちゃんを見たら……」
口を閉ざした綾乃に、カズはニヤリと笑った。

「なんで笑うのよ」
イラっとして綾乃は、カズから目を逸らした。


「俺は優樹菜ちゃんとは知り合いだよ」
「え？」
「ミュージックビデオに出てもらった事もあって、そこからの知り合いだ」
「じゃあ、お姉ちゃんの魅力がわかってるでしょ？」
「ああ、わかってるよ。それでも俺は綾乃が優樹菜ちゃんに劣るなんて到底思えない」
その言葉に綾乃は啞然としてカズを見上げた。