「綾乃!!」
カズは振り返った綾乃の顔を見て、ギュっと唇をかみしめた。

涙を流して、傷ついてボロボロになった綾乃の表情を見て、罪悪感で胸がいっぱいになった。
カズをみた綾乃が走り出そうとしたところを、カズは強引に腕を掴んだ。

「放してよ!どうせ私なんて逃げてるだけよ……でも……誰も私なんて見てくれない……どうせみんな……」

その言葉を聞いて、カズは大きく息を吐いた。

「なんでそう決めつけるんだ?」
月明かりに照らされて、表情のない綺麗な顔をで見つめられて、綾乃は言葉を止めた。


「お姉ちゃん……」
「お姉ちゃん?」
「うん。石川優樹菜って言えばわかるでしょ?」
「石川優樹菜がお前の姉ちゃん?」
驚いたような表情でカズは綾乃を見つめた。