とうとう、涙が零れ落ちて、綾乃は「すみません」それだけを言うと、その場から走るように離れた。
「綾乃ちゃん!」
後ろから聞こえたヒロと三輪の声も無視して、綾乃はテラスからビーチへと走り出した。

続いて走り出したヒロを、グイっと手で席へと戻すと、カズは綾乃を追って走り出した。

「カズ!待てよ!お前に綾乃ちゃんを追いかける権利はないだろ!」
「俺は……」」
「お前は綾乃ちゃんを傷つけてばかりだ!そんなお前がどうして綾乃ちゃんを追いかけるんだ?お前は綾乃ちゃんが嫌いなんだろ?もうかまうなよ!俺に綾乃ちゃんは任せろよ」

「嫌いじゃない!」
咄嗟に言い放ったカズの言葉にヒロは動きを止めた。そして一番カズ自身が自分の言葉に驚いて口元を手でおさえた。

その様子に、ヒロは大きく息を吐くと、
「カズ、お前ガキすきだよ。好きな子をイジメるとか今どき小学生でもやらないよ」
「うるさい……」

ギュッと拳を握りしめたカズにヒロは、
「早く行けよ。これ以上傷つけるなよ」
「ああ、ヒロ……悪い。なんかアイツの事になると俺……」

「もういいよ。綾乃ちゃんがお前の事を許すかどうか知らないけどな」
フッと笑って言ったヒロに、

「そうだよな……」
静かにカズは言うと、「ヒロ、ありがとう」それだけ言うと綾乃がでて行ったビーチへと急いだ。