「お前、父親にその態度ないんじゃない?」
初めて、カズと呼ばれた茶髪の方が声を発した。
綾乃はイラっとして、きっとその男を睨むと、

「あなたに関係ない。」
それだけ言うと、また目を逸らしドアに向かった。
その様子を、ヒロが明るく、
「まあ、まあ、二人とも。行こうか。」
そう言うと、綾乃とカズの肩を抱いて部屋へと入って行った。

「ちょっと!止めて下さい。」
綾乃は必死に抵抗したが、男の人の力に敵うはずもなく、引きずられていった。

そこで、綾乃は久しぶりに入ったレコーディングスタジオの空気に動きが止まった。
その様子を不思議そうにカズは見ていた。

「綾乃、ここまで来たんだから、久しぶりに、な?今外に出てもこいつらのファンに何か言われるだけだろうし。」

綾乃はそれもそうかと、大人しく椅子に座った。