あれ?
綾乃はゆっくりと目を開けると、見慣れない天井を見つめた。

「起きた?」
「三輪さん……」
ガバッと起き上がろうとして、綾乃はトンと肩を押されベッドに戻された。
「まだ、寝てなさい。昨日もあまり眠れなかった上に、なれない撮影で疲れたのよ」
「はい……。すみません。あっ、撮影は?」
「大丈夫よ。綾乃ちゃんの撮りは終わってたし、もうすぐ終わるんじゃないかしら?」

「そうですか……」
(意識を失う寸前に和弘の優しい笑顔を見た気がしたけど……アイツがそんな事するわけないか……)
大きく息を吐いて、目を瞑ると上から思いもよらない言葉が降ってきた。
「後で、カズさんにもお礼を言っておいてね」
「え……?初め綾乃ちゃんを連れて行くって言ったのはカズさんだから」
「……そうですか。わかりました」

(やっぱり……なんでそんなことするの?……あのキスだって……)

そんな様子を三輪は黙って見ていた。
「もう少し休みなさい」
「はい……」
綾乃は考えることをやめて、ゆっくりと瞳を閉じた。
すぐにまた眠りがやってきて意識を手放した。