撮影が始まり、弘樹と麻衣子のシーンは順調に進んで行った。
「監督、ここの部分で、もう一人女の子出しましょうか?揺れる心情を表現したいし。」
「でも、今から人を手配するの難しいだろ?」
そんな、和弘と監督のやり取りを、遠くでぼーっと綾乃は聞いていた。
「何、変更?」
麻衣子は、和弘の肩に手を掛けると聞いた。
「少しカットを増やしたくて。三輪ちゃん、綾乃の衣装返させて。」
「え?どういう風に?」
三輪は驚いたように聞いた。
「麻衣子の恋敵のポジションで綾乃を入れたいから、雰囲気は麻衣子とは反対にかわいらしい感じにして。」
「ちょ…と待って!あたしそんなのできない。」
綾乃は慌てて口をはさんだ。
麻衣子も、
「この子だれ?」
と訝し気な表情をした。
「こいつは、うちのピアノとアレンジ担当。」
「スタッフでしょ?演技なんてできるの?」
「まあ、数カットだけだし。大丈夫だろ?早く行けチビ。」
その言葉に綾乃は、下を向いて手をぎゅっと握った。
もう、何か言う気力は残っていなかった。
和弘はいつものように、罵声が帰って来るかと綾乃を見たが、
「…わかりました。」
それだけ言うと綾乃は踵を返し、三輪の所へと向かった。
その後姿を拍子抜けしたように、和弘は見送った。
「監督、ここの部分で、もう一人女の子出しましょうか?揺れる心情を表現したいし。」
「でも、今から人を手配するの難しいだろ?」
そんな、和弘と監督のやり取りを、遠くでぼーっと綾乃は聞いていた。
「何、変更?」
麻衣子は、和弘の肩に手を掛けると聞いた。
「少しカットを増やしたくて。三輪ちゃん、綾乃の衣装返させて。」
「え?どういう風に?」
三輪は驚いたように聞いた。
「麻衣子の恋敵のポジションで綾乃を入れたいから、雰囲気は麻衣子とは反対にかわいらしい感じにして。」
「ちょ…と待って!あたしそんなのできない。」
綾乃は慌てて口をはさんだ。
麻衣子も、
「この子だれ?」
と訝し気な表情をした。
「こいつは、うちのピアノとアレンジ担当。」
「スタッフでしょ?演技なんてできるの?」
「まあ、数カットだけだし。大丈夫だろ?早く行けチビ。」
その言葉に綾乃は、下を向いて手をぎゅっと握った。
もう、何か言う気力は残っていなかった。
和弘はいつものように、罵声が帰って来るかと綾乃を見たが、
「…わかりました。」
それだけ言うと綾乃は踵を返し、三輪の所へと向かった。
その後姿を拍子抜けしたように、和弘は見送った。

