「綾乃、おはよう。」
「おはよう、由美ちゃん。」
大学の門をくぐるところで幼馴染で友人に由美と会った。

「相変わらずのカッコしてるわね。」
「由美ちゃんも一緒って思われるから、ちょっと離れた方がいいよ。」
綾乃は自嘲気味に言った。
「バカにしてるの?そんな事気にすると思ってる綾乃にがっかりだよ。」
由美は少し語尾を強めて言った。
「ごめん。ありがと。」

ふんわりとしたかわいらしい見た目とは逆に、サバサバとした性格の由美は綾乃の家庭環境なども知る数少ない人物だ。

「今日の1限目何?」
由美は綾乃に聞いた。
「英語Ⅱ」
「あー、岬教授?」
「そう。由美ちゃんは?」
「あたしは、経済学。」
由美は同じ大学の経済学部だ。

「じゃあ、またね。」
「うん。」
綾乃は答えると、講義に向かった。

講義を終え、いつも通り家に帰ろうとすると、大学の前に一台の大きなワゴン車が止まっていた。
そこから、一人の男の人が降りてきた。
「竹田綾乃さん?」
綾乃はびっくりし、逃げようとした。
「ちょっと来てくれる?」

(- やばい!)

そうは思っても、男の人の力にはかなわず、車に乗せられた。
「イヤ!」
と叫んだところに、口を押えられた。
「綾乃!ちょっと静かにしろ!」
その声に、反射的にその声の主を見た。
「あんた…。」
そこには和弘の姿があった。