そう言われて、あたしは昼夜問わず泣く赤ちゃんを思い出していた。


赤ちゃんが言葉を話せたならば「お母ちゃん! お母ちゃん!」と泣いていることだろう。


時にうっとおしく感じる時もあるだろうが、赤ちゃんと母親とは絶対的な愛情で結ばれているから、成り立っているのだ。


「それが、あたしと早苗の関係ってこと?」


「うん。言い方を変えれば早苗ちゃんは蘭ちゃんの事をとても大切に思っていて、心の底から今の蘭ちゃんを心配してる。だから早苗ちゃんの言葉に素直に耳を傾けた蘭ちゃんに、幸せを感じたんだよ」


なるほど、そういうことか。


相手を幸せにすること=だれかの手助けだと思てきてけれど、それだけじゃないんだ。


誰が何を感じて幸せになるかなんて、人それぞれ。


早苗にとっては、あたしが素直になる事が幸せそのものだったんだ。


そう思うと、胸の中に暖かな感情が湧き上がってくるのを感じた。


美鈴たちと関わる事で生まれていたどす黒い感情が、綺麗なものへと変化していくようだった。