すべてを説明する気なんてなかった。


説明したところで信じてなんてもらえないだろうから。


「それって、なに?」


「……言えない」


あたしは左右に首をふってそう言った。


早苗はそれでもあたしから視線をそらさなかった。


傷つけてしまったかと思ったが、その表情は強い眼差しをたたえているだけだった。


早苗は本当に真っ直ぐにあたしに向かってきてくれているのだ。


それがわかり、なにも説明できない自分にチクリとした痛みを感じた。


「そっか。だけど無理するのはダメだよ?」


「うん。わかってる」


あたしが頷くと、早苗は安心したようにほほ笑んだ。


その瞬間、早苗の周囲が金色に光、あたしは目を丸くした。


「じゃ、帰ろうか」


早苗がそう言い、あたしへ向けて手を差し出して来た。


家はもう目の前で、手を繋いだってすぐに離されてしまうのに、そうやってあたしを導こうとする。


あたしは早苗の手を握りしめて、一緒に歩き出したのだった。