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家に帰ってしまえば気を使うことも減るだろう。


そう思い、あたしは早苗と2人で歩いていた。


早苗と2人でいるときは心が落ち着く。


無理に会話を続ける必要もないから、興味のない話を聞かされることもなかった。


「蘭は最近変わったね」


もうすぐで自分の家が見えてくる頃、今まで黙っていた早苗がそう言って来た。


「え?」


あたしは驚いて早苗を見た。


「なんだか優しくなった。だけど同時に、すごく疲れてるように見えるよ」


ズバリ指摘されたあたしは返事ができず、早苗を見ているだけだった。


「蘭は無理をして誰かに合わせるようなタイプじゃないのに、どうしたの?」


そう質問して立ち止まるものだから、あたしも自然と立ち止まってしまった。


そして、早苗の真っ直ぐな視線から逃れるように古民家の庭へと視線を彷徨わせた。


入口のプランターには色とりどりの花が咲いている。


それを見ているだけでも、少しだけ気持ちが軽くなれた。


「どうしても、やらなきゃいけないことがあるの」


あたしは自然とそんな事を言っていた。