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久志は今日帰ったら両親とちゃんと話をすると決めたようだ。


両親もきっと、自分の口から聞きたがっているはずだと言っていた。


あたしと早苗も、それが一番いい事だと思っていた。


けれど、事態は思わぬ方向へと進んでいく。


「お前ら、金貸せよ」


昼休みの教室で、途端にそんな声が聞こえて来たのだ。


その声に威圧感はなく、なにか楽しんでいるような調子だった。


視線を巡らせてみると、男子生徒のグループが正樹たちの前に立ってニヤニヤとした笑顔を浮かべている。


その笑顔は正樹たちああたしたちをイジメていたときのものとそっくりで、背中に寒気が走った。


正樹は無言のまま男子生徒を睨み付けている。


「うおぉ、こえぇ! 俺にらまれたよ。そうやって相手をビビらせて金奪ってたのかよ」


「マジ、殺人鬼の目だよなぁ! あのままじゃ久志はいつ死んでもおかしくなかったぞ!!」


そんな事を大声でいい、ゲラゲラと笑う。


美鈴は青ざめた顔で正樹を見ている。