「やめて……」


青ざめている美鈴に手を伸ばす。


早苗が美鈴の体を後ろから羽交い絞めにした。


「ちょっと、本当にやめて!」


その叫び声も空しく、あたしは美鈴のわき腹をくすぐった。


ほんの少し触れる程度だった。


なのに、美鈴は爆発したように笑い始めたのだ。


その反応に驚いて一瞬手を離し、そしてまたくすぐる。


「やだ、やめてってば! あたし本当に弱いんだから!!」


そう言いながらも何度も笑い声を上げた。


「なんだ。そうなんだ」


あたしと早苗はニヤリと笑った。


それなら笑わせることは簡単だとばかりに、2人がかりでくすぐりはじめたのだった。


今は無理でも、いつかきっと美鈴にもわかる時がくるはずだ。


笑顔でいる事が周囲を幸せにするということを。


その証拠にほら、早苗も久志も今とても楽しそうに笑っている。