この日、登校しようと鞄を持ったところで家のチャイムが鳴った。


こんな時間に誰だろうと思って玄関を開けると、久志と早苗の2人が立っていたのだ。


「2人とも、どうしたの!?」


「蘭、元気そうじゃん。昨日来なかったから心配したんだよ」


早苗があたしを見て安心したようにそう言った。


そういえば、2人からは心配したメールが入っていたんだっけ。


1日のほとんどを寝て過ごしたから、返事を忘れてしまっていた。


「ごめんね、返事できなくて」


そう言いながら玄関を出て、3人で歩き出す。


こんな風に3人並んで登校するなんてことがあるとは思っていなくて、なんだか胸のあたりがくすぐったい。


「昨日は大丈夫だった?」


久志に聞くと、久志は大きく頷いた。


「あぁ。昨日は早苗も一緒にいてくれたし、目立ったイジメはなかったんだ」


それは本当のことなんだろう。


久志の目がいつもよりも輝いてみえた。


普通に学校生活を送ること。


ただそれだけが、久志にとっては大きな希望になっているのだ。


「この3人ならきっと大丈夫だよ」


早苗が自信満々にそう言い、胸を張ったのだった。