非情階段の扉は入口と屋上への出口の2カ所に付けられていて、しっかりと施錠されていた。


「だから言っただろ」


久志が緑色の非常階段を見上げてそう言った。


屋上への道は簡単に閉ざされてしまったようだ。


だけど、久志はここまで来たんだ。


教室まであと少し。


「行こう」


あたしは公園の時と同じように久志の手を握りしめて歩き出そうとした。


しかし、今度はその手を振り払われてしまった。


「教室へは行かない」


「ここまで来たのに?」


「屋上に行くって言うからついて来ただけだ」


久志はそう言い、あたしに背中を向けた。


歩きだろうとする久志の前に立ちはだかる。


「それなら校内から屋上へ行けばいいじゃない」


「はぁ? 鍵がかかってるに決まってるだろ」


久志は呆れたようにそう言った。