あたしは教室へは戻らず、そのまま旧校舎へと続く渡り廊下まで来ていた。


男子たちの声を聞いた後で友人たちのどうでもいい会話を聞く気にはなれなかった。


『どうしてトイレに誘ってくれなかったの?』


から始まって、あたしがいかに友達害のない人間かを語られるに決まっている。


考えて、頭を強く振った。


男子たちの会話が脳裏に焼き付き、女子たちの会話がグルグルと回り、黒板の文字が浮かんでくる。


イジメ、友人、勉強。


それらが頭の中でミキサーにかけられてグチャグチャに混ぜられていく。


1つ1つを分解し、元の姿に戻すのはもう無理そうだ。


そうこうしている間に次の授業が始まるチャイムが鳴りはじめていた。


ここからじゃ走らないと間に合わない距離だ。


あぁ……もう……。


あたしはゆるゆると立ち上がり、旧校舎へ向けて歩き出した。