全員揃っているんだから、紹介がはじまるか、と前を見た。
ドキっと心臓が大きくはねて目を見開いた。
驚きの声を出さないだけ、エライと褒めてあげたい。
顔をあげた正面にいたのは、同じく驚いた顔をした優人さんだった。
はぁ?なんで?
そんな中、如月さんが話し出した。
「歌織さん、今日はありがとう。
息子の優人です。
以前、ちょっと会いましたね。
西田さんとは古い付き合いで、1度はうちの息子とこうした場を設けたいと昔から考えていたので。
まあ、堅苦しく考えないで……」
挨拶をうけながら、なんとか笑顔をつくって会釈をした。
お互いの両親は、ニコニコと喋り出していて、お茶を運んできた女将さんとも楽しそうに喋っている。
見事に私と優人さんの頭上を行き交う会話に、ニコニコと聞いている振りをしていた。
「まあ、二人は顔見知りではあるんだろうから、ちょっと二人で過ごしてみたらどうだ?」
如月さんの言葉に、父も
「じゃ、私達は別室で昼食を頂くから、ゆっくりしてなさい」
「え?」
見事に私の言葉はスルーされて両家の両親は立ち上がって、襖を開けたところで待っていた女将さんと連れ立ちだって行ってしまった。
唖然と見送る私達二人が取り残された。

