着いたのは、有名な料亭。
両親は顔馴染みなのだろう。
料亭の前で車を下りると、店の人に車の鍵を渡して私達は料亭に入った。
「ようこそいらっしゃいませ」
「女将、娘の歌織です」
紹介してもらった。
「歌織です。今日はお世話になります」
良かった。笑えてる、とホッとする。
「まあ、かわいらしい。ようこそ」
両親と女将は話ながら奥へ進んで行くので、ついていくしかなかった。
「皆さまお揃いです」
女将がそっと襖を開け、父、母が入って行った部屋に、ふぅっと息を吐いて一歩入り頭を下げた。
頭は上げたが、目線を下げたまま空いている端の座布団に座った。

