奏でるものは~第4部 最終章~



着いた先で待っていたのは、笑顔の昌さんだった。


「おはようございます」

「おはようございます。
歌織を華やかにお願いします」

「わかりました」


母はそれだけをにこやかに言うと、乗ってきた車で帰って行った。

「歌織ちゃん、どうぞ」


はぁ、と半回転させてくれた椅子に座った。


「鏡越しに久しぶりの再会ね。
よろしくお願いします」

「イメージある?」

「なんとでもしてください」

「じゃ、華やかに。

で、どーしたの?もしかして、お見合い?」

「………」

答えずにいた私を見て目を見開いた。

「え?マジ?優のやつ知ってるの?」

「内緒。ってか、私もさっきまで知らなかったのよ。
どうせ断るお見合いなんだから、どうでもいい」

「へぇ?」

「優さんにも言わないでよ?」

「分かったよ」

言いながら昌さんがニヤッと笑った。