「気楽に声かけていいの?」
同期の彩月。
「あたりまえじゃん、私達同期でしょ?」
「良かった~。
他の会社の人は社長の身内でいきなり専務って人もいるみたいだから、この会社で良かったよ」
回りの人が押し黙っている。
「それは、よかった。
これからもがんばってくれよ?
君の名前は?」
その場の全員が、げっ、って顔をしながら見守ったのは、声をかけた祖父と微笑む父がいたから。
「へ?あ、小宮山彩月、です」
頭を下げる彩月。
「歌織とも仲良くしてやってくれ
この部のみんなもよろしくな」
「はい!」
それぞれ頭を下げたり、返事をするなか、彩月が
「社長と似てるね、今まで気付かなかった」
と私に言った言葉に、聞こえた全員が笑った。
その後、大会は父の挨拶でお開きになり、帰る人に挨拶をして、最後までピアノを弾いてくれた美幸のところに行った。
「急な出世ね、サイタさん」
「からかわないでよ。これからもよろしくね。
今日はありがとう」
「いえいえ、またね、サイタさん」
最後まで、からかわれながら、美幸を見送った。

