奏でるものは~第4部 最終章~


「理事兼スポーツ文化推進部部長 西田正典 理事兼サイタ株式会社専務執行役員へ就任」



おぉ、とどよめきの中、拍手が沸く。



「新たな理事兼スポーツ文化推進部部長に、西田歌織」



今までと違う、静かな囁き声が響く中、思い出したようにパチパチと拍手がなり始め段々大きくなる。


父と祖父が笑いながら拍手をしているのをみて、苦笑する。


その後もグループ会社の社長室付き秘書部長の異動など、発表は滞りなく終わり、内示の文書を手渡されるため、舞台にあがる。


私に内示を手渡した後、会長である祖父が話し出した。


「歌織が部長になることには、祖父として不安があるが、彼女には責任を背負ってもらうことにした。
若輩者でまだまだ学ぶことが多くある。
どうか教え導きながら支えてやってほしい。よろしく頼む」


祖父がそして舞台上の少し離れたところで両親や伯父夫婦など親族一同が頭を下げてくれる。
私も一緒に深く頭を下げた。


拍手が沸き起こる。

頭を下げたままの私の横で祖父が再び話し出す。


「ご存知ない方もおられるかと思うが、歌織の性格は悪くないから、可愛がってやってくれ」


目を開いて驚きながらも笑ってしまうと、どっと笑いが起こった。


―――心から感謝します


と、もう一度頭を下げた。
舞台上は解散になり、両親と一緒に挨拶に回る。