奏でるものは~第4部 最終章~


BGMとして流れていた、美幸の演奏が終わり

「ご出席の皆様………」

会場に司会を担当する女性社員がよどみなく話しかけ、会を始めていく。

会長挨拶のあと、箏の演奏に変わり、永年勤続者の表彰、功労賞の表彰と続き、社長である伯父の乾杯の挨拶で暫くは食事や、挨拶をする人でざわめいている。

祖父と父を少し離れたところからみていたが、親しく話すことはしない。

変な緊張感に食欲はない。

ベージュのツイードのノーカラージャケットに同色のシフォンスカートのセットアップスーツを着ているが、場にそぐわないのでは、と今更な不安感も出てくる。

「間もなく人事の発表ですよ。
堂々としてたら大丈夫。
歌織もサイタ家の人間だから、自信を持ちなさい」

人事部長であり、父の従兄弟に声をかけられた。

「はぁい」

ちょっと間の抜けた返事になってしまい、二人で笑い少し緊張がほぐれた気がした。