しばらく雑談していると、ちょっと、と兄が電話を持って席を立つ。
「久しぶりだね、がんばってるみたいじゃん?
さっきのピアノも歌織ちゃんだろ?」
「そう、急に言われてね。昌さんがあっちに来てるよ、会った?」
「ああ、一緒に来たからね」
「そうだったんだ。
あ、美容関係者の挨拶まわりね」
「俺も挨拶回りしてくるよ。
歌織ちゃんは行かないの?」
「これからガッツリよ」
名刺を交換した。
じゃあね、と笑いながら功さんが離れて行き、変わりに兄が近づくのを視界に捉えたとき、心臓が、ドキリ、として全身に鳥肌がたった。
7年経っても間違えるはずがない。
その姿は、優さんだった。

