「開場になります」
そう言われ、ピアノを弾き始める。
優しく明るいメロディで響きすぎないよう気を付ける。
開場になり、会場が騒がしくなった。
龍くんがそばにきて、「そろそろ、ありがとう」
と小声で言ったのを合図に、ピアノを柔らかく終わらせた。
司会の女性がパーティの始まりを告げ、そっとピアノから離れた。
どうぞ、と案内され、兄のいるテーブルに着き、兄の腕を軽くつつくと
「おかえり」
と小さな声で言った兄。
「なんとか、乾杯には間に合ったわ」
社長挨拶をなんとなく聞く。
その後に乾杯をして、しばらく食事をする。
テーブルと椅子があり、座る場所も決まっていて、上座のテーブルは、タレントやモデルの席になっている。
私達企業の人間は挨拶に回るため、結局席はだんだんと自由化されていく。
バイキング形式で好きなものを取ってきて食べるので、モデルたちは、サラダコーナーにたくさん集まっている。
やっぱりきれい、とタレントたちをみて目の保養をしながら、色々なものを兄と食べていると、
「サイタさん?ご無沙汰してます、長谷野です。
歌織ちゃん、おめでとう」
後ろから声をかけてきた功さんの顔を見る。
「ご無沙汰してます、長谷野さん。
改めて妹共々よろしくお願いいたします」
「功介さん、こんばんは。
ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いいたします」

