人気ブランドの新作発表会。
前列はタレントもいるような華やかな会場の4列目に兄と座る。
目立たないよう、端の席にしてもらい、拍手を送る。
その後は、タレント達が完全に出てから、私達もパーティ会場に向かう。
ホテルのパーティ会場の入り口近くに着くと龍くんがいた。
「ご無沙汰しています、今日はありがとうございます」
「あ、おめでとう。今日はお招きありがとうございます」
兄も笑顔で応える。
「あの、歌織さんにピアノを頼んでも?」
「あ、いいよ、弾いてやれよ」
「え、今から?」
「そ、今から。会場にピアノがあってビックリしたよ。始まるまでのBGMだけ、ホテルにある楽譜はこれ。これじゃなくても何でもいいから」
楽譜をパラパラとみて、ピアノはどこ?と聞くと、こちらへ、と案内され関係者の出入口になっている上座の入り口から入り、すぐに指を慣らすため弾き始める。
後、5分で開場になる、と言われ、一旦演奏を止めた。
龍くんと龍くんのお父さんである社長が近づいてきた。
「今日は急にごめんね、改めてお礼をさせてもらうよ。
あ、サイタグループの部長になったんだってね、おめでとう。
今後ともよろしくね」
「社長、ありがとうございます。
こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。
今日は急で驚きましたが、精一杯演奏させていただきます」
社長は笑顔で頷くと、開場にむけて、まだ忙しそうに他の社員らしき人の方へ行く。
「無理言ってごめんね、歌織ちゃん。
でも、ついにサイタをお披露目したんだね、おめでとう」
「ありがとう。
それより、ピアノへのスポットライトは要らないから。切ってもらってきて、急いで!」
「あ?あぁ、わかった。じゃ」
龍くんが、急いでホテルのスタッフのところへ行った。

