「分かってる、嫌だよな。けど大丈夫。きっとその選択は間違ってない」


「…お前はなぜ」


「俺は、少しでも時間を稼ぐ」




…皆を、守りたいんだ。

少しでも同じ時間を生きていたいから。


アタシに出来ることはきっとそれだけ。




「俺が切り込んだら土方達は行って」


「お前を残して行けってのか…」


「俺は絶対土方の所に帰るから。
死なないよ、何も残してないから」




アタシが存在した証を、まだ何も残してない。




「…絶対だ、これは命令だ」


「まかせて」




グ…と足に力を入れ弾丸に向かって駆けた。




―――ドドドドン




身を翻し刀で弾いても止まらない銃音。


浅葱色の羽織が赤色に染まっていく。



前方の銃を構えた薩摩藩がアタシの間合いに入るまであと少し。

接近戦ならば負けないんだ。

ならば懐に突っ込んでいくだけ。


土方達が少しでも楽に行けるように、銃兵隊だけでいい。




「うあぁあぁあ‼」

「ひぃぃっ!」

「撃てっ!っ撃ーー!」




―――ズ、ボト…


―――ザンッ




羽織の裾が真紅に染まりきった時、背後でうっすら聞こえた様な気がした。




「退け…!」




唸るような悔しがる彼の声が。














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4日間に及ぶ鳥羽伏見の戦いはこれから訪れる長い敗走の一番最初の戦争だった