慶応四年 一月三日




「…くるよ、土方」


「なに…?」




出動した時は真上にも上りきっていなかった太陽が、今では下に隠れアタシ達に影を落とす。



鳥羽街道の通行を求める旧幕府軍に対し、薩摩藩は一向に"否"と言い続けて約5時間。

土方率いる新選組は新選組屯所…伏見奉行所を本陣に展開し伏見街道に布陣していた薩摩藩に対峙していた、が。

流石に我慢ならねぇ…とイライラした雰囲気が隊を包みだした頃だった。




―――ドガァーーン‼




「っっ!?」


「んなっ!?」


「驚いてる暇なんかねぇぞ!戦闘態勢に入れ!」




薩摩藩側が銃、そして大砲を一斉に発砲

戦闘は京都に入ってからだと甘い認識に不意を突かれた旧幕府軍は混乱に陥った




―――ドンッドドンッ




「くっそ!」




薩摩藩の銃撃に対し槍や刀の旧幕府軍。


勿論アタシ達も降ってくる弾丸をはじくか避けるかで精一杯。




「怯むな、数は我らが上!」


「ダメだ!」




旧幕府軍のお偉い方に向かって土方が叫ぶ。




「何?!」


「大砲隊を前へ!」


「あの少数の奴等さえ突破すればこちらのモノであろう!」


「ならば行けばいい!
隊士を戦闘不能するあれを持った数十人の中へ!
あの弾を捌ききれるのならばな!」




つまり、アタシ達はあれに対して丸腰同然。

槍や刀だけではもう勝てる時代ではない事を物語っていた。



土方の言葉にサーと血の気が一気に引いたお偉い方…竹中重固を一度見、アタシは独り言の様に土方に淡々と伝える。




「北の高台に敵の砲兵がいるよ。屯所の周りも鉄砲隊が囲んでる」


「お前、目開いて…」


「恐らくそろそろ攻撃が始まる。いくら新選組が強くても弾幕の雨じゃあ刀を活かしきれない。
…何が最善か分かる、土方?」


「……、」


「流石にヤられっぱなしはムカつくから俺は行くけど、土方達は…な?」




1番したくない選択を選ばせようとしているのは分かってるよ。


…けど、きっと左之や新八も土方の指示を待ってる。