お父さんとお母さんの優しい声。
お互い信頼している者通しの声だ。
「だいじょーぶですよ、私がいますから」
「バカ野郎、お前も近藤さんと一緒にいろ」
「そうですよ、妹は大人しくしててくださーい、沖田さん」
「だから何で私が妹なんですか~?」
「そうだコイツは妹じゃなくて弟…」
「私はなるなら姉です!歳だって愁くんより上じゃないですか!」
「(そっちか)」
まったくもう!なんてプンプンし始める沖田さんも平気な振りをしているだけで、本当だったら近藤さんを守る側に居たいハズで。
本当は近藤さんも悔しくて。
本当は土方さんもやるせなくて。
アタシも不安で。
沖田さんや土方を守る
アタシのすべてを懸けて
そんなの烏滸がましかったんだ。
だってアタシはちっぽけな存在で。
歴史は変えてはいけない。
ならばアタシに出来ることは何なのか
アタシが此処に来た意味は何なのか
アタシはこのままこの時代に取り残されていくのか
…皆が存在しない世界で生きていくのか
漠然と不安になった。
未来が分かることがこんなに怖いと思ったことはない。
この時代の未来は見えてるのにアタシの未来は見えない。
あぁ、負の連鎖に陥りそうだ。
「愁くん、また会いましょうね…直ぐに」
「はい。
…ちゃんと迎えに行きますよ、お母さんも一緒に。
大切な妹ですから」
「てめぇらみてぇなガキはごめんだ」
「おーい、お父さんも忘れんでくれよ」
いつもみたいに笑えているだろうか。
ぐちゃぐちゃになっている心は悟られていないだろうか。
ズクン…
それぞれの痛みや不安を皆が隠しながら、療養の為沖田さんと近藤さん、その他怪我人病人は大阪城へと入った。



