「―――…お前にゃ渡さねぇぞ」




ある夜、沖田さんの体調がわりかし良くてアタシと部屋で話している時だった。




「…隊服、ですか」



沖田さんのその声は今までにないほど感情の無い…いや、読み取れない声だった。



先日の隊服騒ぎを沖田さんが知らないはずがない。

自分の隊服支給はまだなのか、それともないのか、と不安そうにアタシの着流しを掴んだのはつい先刻のことだ。




「優しい貴方のことだから、私のことを思ってそう言っているのはわかってます」


「俺は優しくねえ」


「それでも私だって剣士なのです」


「おい無視すんな」


「刀を握って生きてきたこの新選組の」


「おいてめぇ」


「総司です」




……?

これ台本あったんじゃないのってくらいの息ぴったりなコントを聞かされているアタシはどうすればいい。

空気か、空気になればいいのか。




「…もういりませんか」


「…あ?」


「良い様に使うだけ使って病気になった私はポイですか、そうですか」


「おいいぃぃぃその誤解を生む言い方やめ…」


「あんなことやこんなことまでしたのに、貴方にとって私なんてその程度だったのね!」




…いつからこの場は昼ドラ仕様になった。




「ええ良いわよ、そこまで言うなら私にだって考えがあるんだから!」


「だから違ぇって!おい!」




お、この展開はまさかアタシが間男役になるのでは…




「愁くん!お願い、私の代わりにあなたが…」


「おい待て総司!」


「その男の髪をぶった切って!」


「「……?」」




土方と一緒に一瞬考える。

あたしの思っていた間男役とは違ったがとりあえず髪をぶった切る、というのは理解。




「おい待て待て待て!無言で刀を抜くな!」


「これが彼の望みなら…俺は鬼にだってなんだってなれる…」


「ふふふ…覚悟しなさい土方さん…」



着流しのOFFモードだった土方さんはタジタジと下がっていく。