「だ、か、ら、お前は見えてねぇんだから持つンじゃねー!」


「見えてないんじゃなくて見てないんですー!」




月が変わった。


もう刀槍の時代ではない、と新選組も大砲や小銃を取り入れる事となり隊士達は日々訓練に勤しんでいる。



…アタシ以外は。




「同じ事だろ、お前目ぇ開けても遠くまで見えねぇじゃんか」


「…見える」


「嘘つくんじゃねえっつの」


「見ーえーまーすー」




新八っちゃんや左之が訓練してる中、アタシだけがノケモノで。


アタシだって戦うんだ、負担になる訳にはいかない。





「よぉし分かった、」


「…!」




やっと折れてくれたのか新八っちゃん…!


なんて希望を持った瞬間。




「おーい左之ー、そこで止まれ。んで何処でも良いから指指してー」


「おー良く分かんねぇけどこうかー?」




遠くで左之が叫んでる。

それに対し新八っちゃんは隣でアタシに問うた。




「愁、目開けて左之がどこ指指してるか見えるか?」


「…っ!」


「俺は見える」




瞼を上に上げて痛みと共にくる光を我慢した後。


アタシは左之がいるであろう方向を見た。




「………、」


「もう1回聞くけど、愁。
指指してる方向…いや、左之が見えるか?」




奥歯が痛くなるくらいに噛み締めた。

銃を持つ手も震えるくらいに握り締めた。



だってソコに左之はいない。



近くは見えるのに。
新八っちゃんの眉を寄せたイケメン顔なら見えるのに。


遠くになればなるほど人も風景も一体化して何がなんだか分からない。




「愁」


「新八っちゃん、」


「ん?」


「分からない」


「うん」


「俺、もう闘えない…?」




敵だと思った奴が味方だったら?

敵に発砲した弾が味方に当たったら?


戦いの最中、遠くに気配を感じたって、音を聞いたってそれが仲間かなんて分からない。



刀の時代が終わったらアタシは闘えない?

どうやって皆を守るの?

アタシは確かに在たんだよってどうやって示すの?




「…分かんないよ新八っちゃん」