クラスの温かい迎えもあって、彼は意外とすんなりクラスに溶け込んだ。

彼は必要な時しか喋らないけど、話す時には思ったことをそのまま言うストレートな人だ。

なんだか必要以上に喋って、そのほとんどがデタラメの私とは正反対だ。

さっぱりした性格のおかげで友達もいっぱいできたみたいだ。特に西崎たちとは仲が良く、行動も良く一緒にしている。


でも、すべてがそんなうまくいくはずはなくて。



ある日私が西崎たちと昼食を食べていた時。


「真菜ちゃん、寝癖ついてるよ。」


私は上目遣いで慌てて寝癖を抑えるふりをした。「うそ!どうしてもっと早く言ってくれなかったの!?」私は涙目で頬を少し膨らませた。

西崎とその周りの男子たちはみんな頬を赤く染め、息を飲んでから笑った。

西崎は言った。「可愛いからそのままにしてた。」

「もう〜!」もちろん、寝癖があったことぐらい知っていたが。

これがいつも通りの流れだ。私が可愛いことして、それに男子たちが見とれている。

でも、何かが違う。何かが腑に落ちない。



そう思っていた時、端で静かに弁当を食べていた藤原に西崎が話を振った。


「だって寝癖可愛かったもんな、藤原!



・・・あ。」

彼は一足遅く過ちに気づいた。


藤原は顔を上げ、空間に気まずい空気が流れた。



「ごめん、見えないからわかんなかった。」


西崎は急いで自分の過ちを訂正しようとした。「お、俺こそごめん!変なこと言って・・・!」


やっぱり目が見えないと、こういう感覚のズレが出てくるわけで。


彼は傷ついたそぶりは見せてないけど、やはりこっちは気を使ってしまったりする。



ここで、私はあることに気づいた。


見えないということは、私の可愛げな仕草とかも全部見えてない。


このキャラが成り立っている理由も80パーセントは私の非の打ち所のない可愛らしい見た目と仕草にある。


私が苦労して作り上げている外の顔は、彼には一ミリも見えていない。



そうだ。さっきの違和感の正体がわかった。




彼だけだったのだ。





私を見つめていた男子たちの中、一人だけ、私に見とれず、黙々と弁当を食べていたのは。