「・・・ハッ!!」



私は息を吸って、勢いよく目を開けた。



時間を秒で刻む目覚まし時計の音が耳に届く。





しばらく私はそのまま体を硬直させ、身の周りのものの認識ができてやっと、体の力を抜くことができた。

私は起き上がった。

六畳半ほどの小さい部屋。自分の膝の上には、黒いシーツに包まれた布団。隣の壁には、『チェリー・ロック』のポスター。窓からは、朝日が差しているのがわかる。いつもの朝だ。


私は震えた深呼吸をし、自分の膝頭に額を乗せた。



最近はなかったのに、またあの夢だ。しかも、前よりもはるかに鮮明に蘇ってきた。


あの便所の剥がれ落ちたタイル。床にこびりついた自分の血の匂い。


思い出すだけで寒気がする。


絶対藤原のせいだ。藤原が昨日、あんなことを言ったから、またこの悪夢が戻ってきたのだ。




汗で全身がびしょ濡れだったので、私はシャワーを浴び、制服に着替えた。そして、耳の高さぐらいに髪の毛を二つに結んで、メイクをした。

もちろん、すっぴんでも十分可愛いが、男は多少メイクをしていて、見た目を気にかけているとわかるような人のほうが好きなのだ。薄いメイクを終えたら、リビングへ向かった。



と言っても、そこに誰かいるわけじゃない。母は小さい頃に父と離婚して家を出ていて、父は仕事なのかそうじゃないのかよくわからない理由でいつも家を空けている。どうせ女だろうけど。



私は簡単な朝食を終えたら、鞄を片手に家を出た。