少し前まで降っていた雪が夢だったかのように、春は風に乗ってやってきた。
満開の桜は、新しい学年を迎えるため校門をくぐる新入生や私たち在学生の上から花びらを散らせる。
「真菜ちゃん!」
後ろから声が聞こえて、私は振り返った。
「西崎君!久しぶり!今年も一緒のクラスだといいね!」
私はそう言って、春にはまぶしすぎるぐらいの笑顔を作った。
西崎君は、頰を真っ赤に染めて、「う、うん!そうだね!」と言いながら気持ち悪い、ひねくれた笑顔を見せた。
よかった。こいつ、去年から全く変わってない。
私は安心と憂鬱から出たため息を漏らし、きゃぴきゃぴ西崎君と話しながらクラス発表がされている掲示板まで歩いた。時々つまずいたふりをしながら歩いていると、同じ学年の男子たちが私の周りに群がり始め、掲示板に着いた頃にはうるさい虫の集団みたいに集まっていた。
掲示板を見た。
3組
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36 矢崎真菜
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3組か。まぁなんでもいいんだけど。誰が一緒のクラスかも私は探さない。どうせ結局はクラスの全員が私と友達かそれ以上になりたい羽目になるんだし。
「嘘だろ!?真菜ちゃんと離れちゃったよ〜・・・。」
「よっしゃー!!真菜ちゃん!1年間よろしく!!」
ぎゃあぎゃあうるさいなぁ。同じクラスでも違うクラスでも、お前らが期待してることに応える気なんてこれっぽっちもないんだから。
それでも私はまた笑顔を作って、
「そうなんだ・・・でも会いに行くよ!何組?」
「うん、よろしく!楽しい一年になりそうだな〜!」
と答える。
全ては、あの過ちを繰り返さないため。