「ねえ、康介」


「急に、何ですか先輩」


「あの人、名前わかる?」



ゴールを決めた人とハイタッチするあの人を指差す。



「あー、涼太くんのこと?」


「涼太くん?」


「渡辺涼太。俺の中学んときの先輩っす」


「渡辺、涼太……」



忘れないように、ゆっくり繰り返す。


わたし、変態みたい。



「俺、涼太くんに結構お世話になったんですよね~」


「そ、うなんだ」


「じゃ、次陸上部行きますか!」


「え、ちょっ……」



康介はまたわたしの腕を引っ張って、今度は陸上部の方へ向かった。


本当はもう少し写真を撮りたかったけど。


康介の引っ張る力が以外と強くて、そのまま陸上部へと向かうことにした。


また今度写真を撮りに来ればいいや。


そう思った。


陸上部も風を切って走る姿がカッコよくて、いつもよりも多く写真を撮ってしまった。


残量大丈夫かな……。


人を撮りたいってずっと思ってたけど、ようやく叶った。


許可なしに盗撮みたいなことしちゃったけど、充実感がわたしを満たした。