玄関に向かうと、姉の友人神吉佳乃(カンキヨシノ)と長埜幸恵(ナガノユキエ)がいた。
家族ぐるみの付き合いがあり、私達の名前の事情も知っている友人である。
姉の友人二人は、申し訳なさそうな顔で、
「歌織ちゃん、久しぶり。
唯歌にお線香あげてもいい?」
佳乃が聞いてきた。
「こんにちは。
どうぞ上がってください。
両親はもう仕事に出なければならなくて。
私しかいないけど」
というと、お邪魔します、と玄関をあがった。
和室に飾られた祭壇にお線香を立てて長い時間手を合わせた姉の友人に、感謝した。
お茶を出してくれたお手伝いの嶋さんが、出ていくと
「急なことで、大変だったわね。
何も力になれないけど。
これからもまた来てもいい?」
「元気で明るい唯歌を忘れるなんてありえない」
涙目になりながら幸恵が言った。
彼女たちも姉がいなくなって悲しんでいる。
私の知らない姉を知っている人がいる。
姉を大切に思ってくれる人が、いる。
思わず顔がほころぶ。
「ありがとう。
またいつでも来てください。
姉の葬儀にも来てくれてありがとうございました。
姉を思ってくれてありがとう。
それとちょっと聞きたいのだけど。
あの事故の日、なんであの場所にお姉ちゃんがいたか、知ってる?」
と、聞くと二人が顔を見合わせて、
「よくわからないの。
春休みだし、毎日の予定を聞いてたわけじゃないから、ねぇ?」
「うん、私も知らないわ、ごめんなさい」
「いえ、何か分かったら教えてください」
学校の予定でもなく、学校の友達と会っていたわけでもなく、何があったのか、分からないまま、春休みは過ぎていった。

