夜遅く、和室に引かれた布団に眠る姉の枕元に両親が座っていた。
私は、布団を挟んで両親の向かいに座った。
綺麗な顔で眠る姉に
「お姉ちゃん…」
声をかけると父が姉を見たまま
「何とか、間に合ったよ、連絡ありがとう」
と言った。
言わなければならないことがあった。
伝えなければならないことが。
「お父様、お母様。
お姉ちゃんが私に最期の言葉をのこしたのよ。」
二人とも驚いて私をみた。
「お姉ちゃん、私をみて、苦しそうに弱い声で言ったの
『お父様、お母様、ありがとう』って。
それだけを言いに来たの
それから、これ。」
ネックレスと指輪を見せて、看護師から聞いたことを伝える。
父も母も指輪は知らなかったらしい。
もう一度それらをみて、枕元においた。
「私は部屋に戻るわ。
おやすみなさい
……お姉ちゃん、おやすみ」
驚きの表情のままだった母が、
「歌織、ありがとう」
と言って泣き崩れた。
私は涙をこぼしながら、お姉ちゃんの頭をそっと撫でて部屋を出た。

