奏でるものは~第1部~





看護師さんが、


唯歌さんを、キレイにさせてください


と言ったことで、父に支えられ母も立ち上がった。

そして、両親は警察の人に呼ばれ出ていった。



どのくらい時間が過ぎたのか分からなかった。
辺りは暗くなりかけていた。



あなたは、妹さん?



声をかけられた方をみて頷く。



「辛い、ことですね。
こんなときかける言葉もみつからないわ。


ほんとに、残念です。


これ。


お姉さんが運ばれてきたときに身に付けてた金属類。
治療のために取らせてもらったの。

きっと大切なものなんでしょうね。

お返しするわ」



差し出した手に、ガーゼで包んだ何かをのせてくれた。
私の手で握ってしまえる何か。


「ごめんなさい、ちょっと、外でまっていてくれる?」


――はい、ありがとう


と呟いて、病室を出た。
入れ替わるように、警察の人達が入ってきた。



廊下の硬いベンチに座り、渡されたガーゼを開いてみた。


ネックレスと指輪


ネックレスは父にもらったもの。
よく身に付けてたのを知ってる。


でも、この指輪は?

知らない。

大切なもの?

知らせたい、知らせなきゃいけない、大切な人がいるの?

…すけ……か。

それだけじゃ、わかんないよ。

何も、わからない。

お姉ちゃん、何も言ってなかったじゃない?
お姉ちゃんが幸せを祈るような人?



――いつか、その人に会ってお姉ちゃんの言葉、伝えられますように……



指輪に祈った。