奏でるものは~第1部~



時は止まらない。


誰にも同じ時間が過ぎるが、感情や経験はそれぞれ違う。
そして、決して戻ることはない。
過ぎた時を思い出し、それを懐かしく思う。
きっと今のこの瞬間も明日からは、過去の経験として、一生懐かしく思うのだろう。



校門が見えてきた。



「お姉ちゃんと登校するの楽しかった」

私を見ずに

「そうね」

と姉が応えた。

――ありがとう

言葉にはしない。
照れくさいし、この先も一緒に時を過ごすから。


高等部の卒業式はすでに終わり、1、2年生が春休みまで登校している。

校門をくぐり、じゃあ、といつも通り、でも、いつもより少し長く手を振りあってそれぞれの校舎に向かった。