入試は午前中に国語と英語の筆記試験。
午後に演奏して、その場で面接である。
絵画や書道などの作品は体育館に飾られ、午前中から、試験官が見て回り、午後にそれぞれ作品の説明と面接らしい。
特殊な科の受験のため、友達と一緒に受験する人は少なく、試験を待つ時間も静まり返っている。
お弁当を食べた後は、午後の演奏のための待機場所に移動して順番を待つ。
他の受験生のピアノと希望する楽器を奏でる音が聞こえ若干緊張してくる。
「受験番号30番の方」
意外に早く呼ばれた。
「はい」と返事をして試験の部屋にはいる。
入試の部屋はいくつかあるみたいだが、私は、音楽室だった。
「桜輪学園、西田歌織です。
よろしくお願いいたします」
学校で教えられた通り挨拶して頭を下げる。
「では、ピアノからお願いします」
グランドピアノの前に座り、楽譜を広げ集中してから演奏を始める。
課題曲を演奏しおわると、箏を準備して演奏した。
入試としてはありきたりな質問と音楽について聞かれる面接を受け、箏を持って部屋を後にした。
大きな楽器は移動が大変である。
時折足を止めながら、母が待つ食堂に行くと私を見つけた母が、手を挙げて来てくれた。

